僕はロルフィングのセッション中に、何となく、または直感的により深いリリースを必要としている箇所に手が行くことがあります。そうして見つけた箇所はたいていの場合、筋膜の強い癒着や、強い張力などにさらされて肥厚した組織のように感じられるものだったりします。でもしばしば、神経やリンパの周辺に糸巻きのように絡まった「しこり」や「ざらつき」のようなテクスチャーを持った、範囲も大きさもまちまちなものがあったりします。
それらをゆっくりと、絡まった糸をほどいていくようなイメージでワークしていくと、クライアントも自分も、何かが解ける感じや、すっきりした気分が体の中に広がってくるのがわかることがあります。個々人がロルフィングに出会うまでに溜め込んできたさまざまな身体・精神的ストレスやトラウマの結晶化したような存在が、ロルフィングのセッション中に緩やかに、溶けるように消失していく瞬間は、ロルファーをやっていることの醍醐味のひとつだなあ、とつくづく思います。
クライアントが言葉でフィードバックしてくれることもあれば、体の変化でわかることもあるけれども、何よりも、皮膚を通じてこうした気持ちが伝わってくるような気がします。どうして判るといえるのか?という疑問に答えるだけのはっきりした根拠は持ち合わせていませんが、以前の僕はそうした他者と共感しあうことにすさまじく鈍感であったことから考えると、訓練や個人の気づきによって多くの人が習得できる感覚なのではないかと思っています。
ところで、先日のセッションではクライアントの肘に緩みを「呼ん」でみようと働きかけている最中に、なぜか自分が柔道部で活動していたときの様子が脳裏にフラッシュバックしてきました。ふと我に返ったときには肘が緩んでいて、可動域が広がっているし、尺骨と上腕骨の関節がふわふわとしたスペースができている。その結果、肘から下の慢性的な力が抜けて、肩関節が前にシフト、背中の動きに広がりが生じ、胸が休まり、首が胸郭の上に安定して収まる、といった連鎖反応が生じたような感じに見えました。
クライアントさんのフィードバックで面白かったのが、普段から移動が多く、移動のときに肘を曲げてバッグを肩から背中に担いでいることに思い当たった、というものでした。実際にやって見せてくれたその様子は、まさに柔道の背負い投げに入るときの肘の形に似ていて、しかも自分がかつて失敗して肘の靭帯を断裂させた背負い投げの時のような胸と肩の反りを備えているものでした。
あー、あの時は毎日痛くてしんどかったなあ。。下手くそだったし。。としばし感慨深くなりながら話を聞いていました。ただ判ったのは、これによって自分の体の「統合」がまた一歩進んだこと。僕自身が、よりよく、快適に生きるために自分の整理整頓を少しだけ進めることができたんじゃないかと思ってます。
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